線路は続くとは限らない

時事・事象・社会現象

ここ数年、毎年のように豪雨災害に見舞われて甚大な被害を計上する日本列島の夏の大雨シーズンですが、今年も各地に多くの被害をもたらしたと聞きます。その原因たる因果はどこにあるかは定かではありませんが、破断したインフラは再生するにも撤去するにも相応の労力を要します。その際に再生の選択をした場合、相応の災害対策をしなくてはならないというオマケがついてきます。道路や電気のインフラは徹底した災害対策でもって強化補修が成されているのですが、昨今問題著しいのは鉄道界隈。公的交通機関としての役割を担いつつも、その運営は営利意図なものであり、そこに対しての鉄道会社の方針や地域の方針にはかなりの齟齬が発生するケースもしばしば有るという話。

西日本地区のローカル線のかなりの路線が相応の被害を受け、長期運休を余儀なくされていると聞きます。その修復と災害対策は優先順位でもって再生が成されている次第ですが、おおよそ優先順位の低く設定されたいわゆる「赤字ローカル線」については多くの議論が成されつつも平行線を辿るケースが複数あります。特に輸送密度の低い地域の被災線区の修復は後回しにされ、区画によっては廃線の憂き目を辿ろうとしている区画もいくつかあるという話で、「そもそも線路は必要なのか」という議論に始まり、輸送体系の在り方や最適な復旧計画の樹立などの多くの問題を抱えつつもいくつかの地区では迷走が続いていると聞きます。

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JR九州管区のローカル線はここ2~3年の間にかなりの被害を被るに至っています。突貫で数日で復旧するケースもありますが、地域によっては大幅に修復難航している地域もあります。「そもそも修復してまで鉄路を維持する必要があるのか」という議論にはじまり、採算性や維持管理の問題を経て難航するケースが増えています。中でも突出して揉めているのが、日田彦山線の添田~夜明間の区間の復旧の話であり、すでに2年以上が経過しているにも関わらず大きな進展がないまま代行バスでまかなわれているという状況が続いています。

筑豊地区の鉄路維持にまつわる諸問題

筑豊本線を基軸にする「石炭輸送網」によって構築された路線の多くが「石炭輸送ありき」の路線構成で出来ているために、貨物輸送の消失による「維持の不要問題」を抱えており、災害を契機に廃線への舵取りが持ち上がるようになったと言われている。日田彦山線もその石炭輸送網の一端を担っていることから「旅客には不向きな実情」を多く抱えている。多くの駅は住宅地から離れた位置にあり、テコ入れの難しい線形や利用事情がある。例外的に利用率の高い志井公園駅や一本松駅は、JR発足後に新設された駅である。

この区間は日田彦山線のなかでももっとも輸送密度が低い区間であり、データイムは2時間に1本。車両は1両編成を交えた運用形態で、その1両もかなりの空気輸送を行うというほどの閑散区間。この区間の収益性は極めて悪く、おおよそ2時間に1本程度設定されている全区間直通列車でまかなわれていました。2年前の大雨被害で橋梁流出などの甚大被害を被ったこの閑散区間をどうやって立て直すかという会談の際に、JR九州側の提示した方向は「バス高速輸送システム」によるバス輸送であり、輸送密度を考慮すれば妥当な方針であるという見解を出しました。

JR九州がこの区間の復旧に対して消極的なのは、地元自治体が「鉄道での復旧を強く望む」姿勢を出しつつも「すべてJRの負担でやってくれ」というものだったといわれています。定員120人くらいと言われる気動車1両の列車を2~3割も満たせず空気輸送が常態化著しい「輸送するものが何もない」という区間に、億単位の災害復旧費に加えての億単位の設備維持等の赤字要因を丸投げという状態を受け入れるだろうか? という話。予定調和のようにすべてが平行線のまま現状が続いており、このまま延々とバス代行が続く可能性が示唆されているくらいの状態です。

鉄道維持の忌避理由は設備維持に依る部分が大きく、保線や設備維持の他にも車両維持や運用問題を抱えており、旅客輸送のみでその穴を埋めるのは極めて困難と言われています。この区間に関して言うのであれば「九州管区内ワースト5に連なる赤字区間」であり、鉄道としては「イチから鉄路を敷設する」とまで言われた被災状況に対してまったく分の悪い被災区間であり、そもそも何故鉄路復旧に執着するのかとまで言われた区画でもあります。3年目に突入した被災地区のバス代行は更に整理が進み、添田~日田間を直通するバスは4往復にまで減少しましたが、そもそも全区間の利用状況はそれで賄える程度しかないという話。個人的にはBRT方式によるバス輸送の効率化の方が、運用の簡便さを考慮すれば断然良いように思えるのですが。

鉄道の運用開始から60年以上経過するローカル線沿線の事情はおおよそ「過疎化に苛まれる」という図式が出来上がってしまっており、この沿線もまた集落乏しき閑散区画。鉄路に執着するのであれば相応に「運ぶものを増やす必要」を迫られるわけですが、突出した運用と収益システムが必要になってくる都合「人がいない地域に運ぶモノもない」となると、そこそこ高規格の道路網でもって補完するのが理想性の高い選択肢ではないかと考える次第ですが、現地は未だに明確な回答が出ないとか何とか。

日田彦山線・彦山以南の輸送事情

彦山以南の輸送事情はかなり特殊であり、添田~夜明間の輸送事情は横たわる釈迦岳によって分断されている。国道は釈迦岳を大きく迂回するルートを通っており、代行バスはこちらを経由している。鉄路は釈迦岳を長大トンネルで抜いており、速達性は高かったものの優等列車に恵まれずその利便性は低かったという。輸送需要も釈迦岳で分断されており、添田~彦山と筑前岩屋~夜明とでその需要が分断されていた。ただ、車両運用上の都合でこの区間は走破する普通列車で構成されていた。

結局民営化した公共交通は良かったのかどうかという話ですが、輸送事情が大きく転換してしまった昨今の事情を鑑みれば、この区間の路線廃止は待ったなしだと思われる次第です。そもそも交通の在り方を考えれば鉄道維持というのは地域にとっては「呪縛のようなもの」なのかもしれません。「昔からあったから、無くてはならない存在にされてしまった存在」というか何というか。災害と復旧の天秤に纏わる問題はここ2~3年周期で毎年何かしらの災害にどこかが見舞われており、とりわけ急峻な地域に敷設の多い九州のローカル線区に大きな影をもうしばらく落とすことになりそうです。

「乗って残そう」として残った鉄路は事例が乏しく、可部線の山間部線や三江線なども結局は残せなかった鉄路。まして線路が派手に寸断された線区に於いては、もっと多様な方向から見た「相互に利用しやすい方向への修正」は避けて通れない道なのかもしれません。

 

 

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