コンテンツも繰り返される

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今年も多くのコンテンツに触れてきましたが、その多くはリアルタイムで観ることのできなかったものであり…いわゆる「周回遅れ」でコンテンツを視聴するという消化不良の賜物がそこにあり、コンテンツそのものの楽しさと引き換えに色々とモヤモヤするものが残っていった年末の一日でした。今はコンテンツも鮮度が重要な要素になっており、時期的にもフレッシュなコンテンツ消費というものについて考える機会になりましたが…それは明らかに供給されるコンテンツ数の過多状態であるという話であり、現場では過剰に生産ラインへと投入されたコンテンツ数による悲劇が繰り返されるのではないかという話で持ちきりです。それでも生産工程には容赦なくノルマが課されていくのですが。

一番売れているコンテンツは「一番求められているコンテンツである」というのはおおよその王道ストーリーであり、実際に売れてきたコンテンツは「異世界転生して無双する物語」だったというのは興味深くもあり、昨今のコンテンツ消費側の闇を反映させたかのようなデータとなりました。しかし、消費できないほどコンテンツが溢れかえる現状には「クリエイターになって一攫千金」というある種のジャパニーズ・ドリームな思想が蔓延しており…結果として創作サイドも消費サイドも得をしない共倒れになりつつあると聞きます。昨今もっとも過剰になったのは声優志願者だという話でもあるという興味深いデータと突き合わせると…今もっとも求められている世界が無双出来る世界であり、一攫千金のジャパニーズ・ドリーム版であり、ひいてはそれがクリエイター勢の無限増殖のトリガーになっているのではないかという話。小さな娯楽界隈の世界がいつの間にか世界規模の要塞になってしまい、その自重でもって崩壊しそうな状況というのがなかなかモヤモヤ感漂う感じに仕上がっているコンテンツ界隈の未来はどうなってしまうのかは私たちも大いに気になっている次第です。

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オタク趣味界隈では毎クールのアニメ作品について「豊作か不作か」を議論するといいますが、少なくとも昨今は吟味する余裕がなくなるほどに大量投入探されており、しかもかなりの数が「豊作に分類されている」という実情があり…豊作が故の不毛戦線が続いていると聞き及んでいます。豊作であれ不作であれ個人が作品に投入出来る熱量は限られており、豊作な時期の作品は風化しやすいとまで言われています。この時期になると今年の冬アニメの事なんてなかなか記憶を検索することが出来ないとか言われていますが、そもそも過去を振り返る余力がなくなるほどの物量戦線が昨今のアニメやコンテンツ事情であり、その溢れかえる創作陣営の人海戦術でもって今なお大量投入が成されているというかそういう話。限られたパイを奪い合うしか出来ない現状で、更に競争要員が増えて奪い合いが激化したという話がここ数年続いており、世の中には「掃いて捨ているほどクリエイターがいる」という状況だとか。

創作人口の激増によって「作品閲覧の機会」そのものの減少も危惧されるという状況はかなり特殊な状況ですが、それが昨今の「クリエイターのダンピング」に繋がっているという話もあり…夢が故に夢物語というなかなかハードな現状を抱えているに至っているという話も無視出来ません。クリエイターの土俵は作品のはずなのに、土俵に上がるためにも既に運ゲー要素が多くちりばめられているというのは…かなり過酷な話のようにも思えます。それを逆手に取った戦略でもってSNSから「飛び級」する人々もいるようですが、そのトリガーに手を伸ばすに至れない人口は確実に増えており…この界隈は混沌を極めるという状況に陥っています。作品を扱う人口バランスもかなりいびつになっており、創作サイドの過剰化とは逆に生産サイドは極度の人材不足であるとも言われています。デジタル制作方式が確立されたことによる作業効率の恩恵はあったといわれいるものの昨今の異常なまでの作品数投入は生産現場を圧迫するには充分であり、結果としてすべての生産サイドが消費層を巻き込んで共倒れするという最悪の事態に繋がりつつあります

日本の労働事情の縮図のようになりつつあるコンテンツ産業界隈、この疲弊しきった界隈においてもまだ夢を追いかける層が増加過剰傾向で推移しており…今は業界を支えるというより「この増えすぎた参入者勢をひとまず賄う程度の作品作り」が浸透しつつあり、結果として業界を広い範囲で疲弊させているという実情があります。毎日数本放送されるというのアニメ作品を社会人生活の片手間で消化出来るかという無理ゲーはただでさえ「コンテンツ・メタボ」の一途を辿っており、ユーザーは食材にされる直前の北京ダックのように肥満化を続けています今必要なのはコンテンツ本数のダイエットというのはかなり過酷な話になってしまうかもしれませんが、早急に疲弊するかジワジワと疲弊するかの選択肢でしかないあたりに業界の迷走部分を見てしまった気持ちになってしまいます。

歴史は繰り返すというのであれば、コンテンツ業界はその慣習故の悪癖による悪夢を繰り返すのではないかという話であり、供給過剰な作品群と供給力不足の現場事情がこの状況を一通り破壊してしまうのではないかという話。世に出しても消費されない作品は文字通り廃材になるしかなく、いくら投棄しても怒られないハズの才能投棄が巡り巡って別の才能を駆逐する現象が発生するという業界きっての悪夢が…すぐそこまで来ているのかもしれません。コンテンツ投稿サイトの増加そのものは一段落しているものの、そこへの参加人口は未だに右上がりの状態であり、過度の人口増加が「人的価値へのダンピングに繋がる」という危惧材料になりつつあるという話は看過出来ない話であり、しかしそれでいて私たちにはどうする手立てもないというのがジレンマになりつつあります。21世紀に入って、私たちは短期間に余りにも多くの作品を投入しすぎた…あのビッグタイトルがもう10年くらい前の作品だったとかというのがザラにある昨今、私たちはいやでもダイエットを強いられるという話であり、どの負担を切り落とすかを決める時期にまで来ているのかもしれません。

コンテンツがメタボで死活問題になるというのなら、その未来にあるビジョンは「作品の無駄生産」であり、消費出来る当てもなく発注された日配食品と同列であるという話。昨今食品廃棄などの問題が取り沙汰されているわけですが、昨今はアニメ業界という巨大なマーケットですら無駄な生産を強いられ、投棄レベルで放送に流されるという悪夢を見ているのかもしれません無駄を増やさない作品の放送方法や各種マネタイズが求められているのでしょうが、なかなかそこにはメスが入らないのが悩ましく思います。そして、この作品消費期限の短期間化が噛み合うことにより…私たちは「作品群に圧死を迫られている状況」を何とかしなくてはならない、何故そうなってしまったのかも込みで。いま、戦わなくて良い相手と戦っているのは何故かも含めると…作品ひとつを愛でるのも結構大変な話である、という話。

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