ご注文は「異世界転生」ですか?

文化・注目・有名現象

タイムラインがわりと物騒な事案で盛り上がっている昨今、政治経済から日常地域に至るまでここしばらくのネガティブツイートが絶えない日々が続いています。もう世界規模で未来は真っ暗なんじゃないかっていうかそんな絶望極まりない未来図しか描けなくて自暴自棄になっている人とかたくさん居そうでアレですが、そんな中コンテンツ界隈では「異世界転生もの」が妙に大流行しているらしく、毎月のライトノベルのタイトルがちょっと覚えにくいアレなタイトルで埋め尽くされているという状況が続いています。書店で口頭で予約がしにくそうなタイトルばかりでちょっと辟易としますが、その内容はピンキリで純粋に読み物として面白かったり、はたまた作者のメタな叫びが聞こえてきそうだったり…。

果たして異世界転生のアレは本当にチート社会なのかこの世の地獄なのかは定かではありませんが、はっきり言えるのは「現実逃避に飢えているのではないか」というメタい魂の叫びではないでしょうか。社会も経済も疲弊し、日常のツイートはネガティブそのものの縮図が続き、リアルの延長線上は絶望と徒労だけの日々…こんなハズじゃなかったと言わんばかりの魂の叫びがテキスト化して作品になるに至ったと考えると…ある意味それは「求められて発刊に至った」という風にも解釈でき、なかなか業の深い時代を生きているんだなって気持ちになります。しかし、異世界系タイトルが本当に増えてしまいましたが、異世界って過ごしやすいんですかね?

スポンサーリンク

異世界に転生してチートスキルで人生のサクセスストーリーをやり直し的に満喫したい…その一心がどこで醸成されたかは定かではありませんが、おおよそ昨今の社会事情に絶望した果てに自らがその願望でもって転生したいと願った産物ではないかと思っています。異世界でチートで無双出来る人生なんて…最高じゃないですか。それに比べて現実の自分は…となると本当にメタな話になるんですが憂鬱極まりない話に自己嫌悪まっしぐらになってしまいます。認めたくなくても世の中は生まれたときにチートレベルは決まっていて、人生の苦痛という苦痛を一通り味わって血のにじむ努力をしても越えられない壁が存在する…というリアルチート環境というのはあるので、本当にこういう作品は「この暗黒時代が生み出した副産物」なのかもしれません。

異世界転生の基準やら何やらはさておきとして、変えられない現実を変えられる世界があってそこで活躍の場が持てる…それは人生に於いては最高に輝かしい瞬間ではないかと思います。逆に言うと、現代日本は本当に抑圧社会であり同調圧力と権力圧迫による不毛かつ消費させられる社会。どれだけの人が異世界就職を希望するかは未知数というくらいという話はなかなか笑い話として片付けられない側面があり…求められるべくして求められているのかもしれません。もしかしたら本物の異世界が。

そこに良い世界があるとは限らないし、何の生かせるスキルもないまま放り出されるかもしれないし。世界とはそもそも残酷なルールの下に存在するフィールドであり、楽園か地獄かなんてものはそこに生きてきたものにのみしか解らないものなのですが…それでも今の日本の若人は異世界を求めているというのはなかなかパンチの効いた皮肉な話かもしれません。少なくともスマホもゲームも水洗トイレのない世界で生きていく自信のない中の人ですが、不毛極まりない昨今の現実社会と天秤に掛けても…やっぱり異世界転生ってちょっと憧れてしまいます。勿論、メタい理由で憧れてるわけですが、チートで無双ってやっぱり…ロマンですよね?

ただ、私たちが仮にあるかもしれないと夢見た異世界に転生したとして、そこで無双的な活躍を果たせるかと言えばそれは別のシナリオであり…やはりリアルで頑張って得たスキル分しか活躍出来ないという話であり、実は現実世界とあまり変わらないのかもしれません。おおよそ読んできた異世界モノの作品の主人公はおおよそ行動派だったりコミュ力高かったりと何かしら「クリティカルなスキル保有」をしているケースが多く、日陰者のなろう系転生モノのいち読者程度のスキルでは不足感がハンパない気がして成りません。逆に言うと、異世界転生モノで無双する手段と行動が出来る人は…ある意味リアルで応用策を得たら「リアル人生でも相応に無双とまでは行かないまでも活躍の場はある」のかもしれません。

無双出来る人には、相応の理由がある。それは重い事実であり、相応の理屈でもって説明がつく話であり、舞台に関係なくフィールドの違いはあまり関係ないのかもしれない…という話かもしれません。身も蓋もないですが、現実世界でのコミュ障は異世界に行ってもコミュ障であり、結局はスキル取得と弱点克服は必須科目という話であり…世の中にチートできる要素っていうのは超がつくほどのレア要素という話のようです。本当にせつない。

そんなこんなで溢れんばかりの異世界モノ作品を読み漁る日々を繰り替えてしていますが、出来れば「現実世界と異世界を往来できる話」とかの方が私は好きかなって思っています。いわゆる「転生するほどどっぷり行きたくないし、たまに現実世界に帰ってきたい」的なヤツ、元ネタはもう90年代ファンタジーノベルの頃からあるネタですが、最高に自由奔放なあの世界設定のあの世界…良いですよね。どちらかというと…異世界観光とか、部分的に異世界と繋がってる的な話がもっと読みたい。中の人も相当「異世界転生症候群」ですが、やっぱりスマホと水洗トイレのない世界にはなじめそうもないのでもう少し現実世界で無双出来る努力をしたいって考えている次第です。世知辛い。

コメント

タイトルとURLをコピーしました