価値なんてものはひとつじゃないし、それを測る価値観もまたひとつじゃない。それはこの世界に於けるある種の基本思想なのですが、意外とその認識は甘かったりするという現実。そういう理屈を「理屈じゃないカタチで体現した空間」を「コミックマーケットという同人誌即売会」に見たといまでも思っている。今や日本全国津々浦々だけでなく世界各国からも来訪者が増加中という日本のオタク文化の総本山たる最強にカオスな凝縮空間ことコミックマーケット、今年はとうとう3日では足りなくなり4日を要する更に膨張を遂げた混沌になってしまったが、無事完走出来るのかどうか。
この空間に対しての異議異論は多々あるものの、とにかく「色々なものがあの空間に集うという混沌は非常に楽しいものである」と多くの人が認識している。ただ昨今のコミケは巨大化しすぎて幾分楽しむのに事前準備が必要になったという話になってしまっているものの、その独特の世界観に魅せられて毎年通い詰める羽目になる人の数は一向に減る様子が無いあたりにこの混沌の魅力というものを痛感させられる次第であるわけで。おそらくはウン十年ぶりの東京オリンピックよりも注目されていると言っても過言ではない年2回のコミケは、そろそろビッグサイト全館でもっても足りなくなる日が近付いているのは間違い無い次第。
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マーケットと冠しているものの、その理念は市場経済という名のマーケットではないのがそもそものこの空間のカオスの意義にして原点といっても過言ではないと考えています。マーケットという言葉になぞってここで扱われている物品の数々の「何がマーケットなのか?」と言われれば、それは「個々の価値の取引である」としか回答できないのである。今でこそ巨大化しすぎて参加そのものにかなり課金する必要が出てきた都合で名実ともにマーケット化が著しいものの、原点にあるものは「価値の取引」であり、そこに広げられているものは「価値を表現した作品の数々」である。こんなコアでアンダーグラウンドなコミュニティイベントが日本最大級のハコを貸し切っても足りない規模になったのはそもそも非常に興味深い話、という話。
肥大化するコミケと経済効果
サブカル界隈を牽引するコミックマーケットが東京都と周辺地域に波及させる地域的経済効果は非常に高く、交通や宿泊に交流空間など非常に多岐に及ぶ。毎月多くの地域で即売会活動を銘打ったイベントは多数あるが、その特別感と規模感による集客効果は絶大であり、独特のプレミア感を感じるために参加する人たちも多い。また、企業イベント併設やコスプレスペースなどの関連空間が併設ということもあり、その参加人口は今もなお爆発的に増加を続けている。3日開催基準でその動員数は30万人規模であり、首都圏の交通と物流を総動員する程度には経済効果も高い。ただ、その動員人口の多さによって、その空気感を満喫できるかといえばかなり難易度は高く、定期的に「戦場の様相」と表現される程度には過酷な環境である。
この光景を垣間見てしまうと、価値の巨大さに加えて混沌というものを見てしまったような錯覚に襲われてしまう。興味関心のない人から見れば「訳のわからないものに大量にカネを投じている」ようにも見えるというこの世界、これが「価値の取引そのもの」であるのは間違いなく、これらに価値を感じている人たちからすればそれは「コンビニでジュースを買う程度の感覚の行為」でしかないという話なのだから世の中はいかに価値というものが混沌としているかをうかがわせる、という話。そこにどんなものがあってどんな価値が埋もれているかはどの世界のどの界隈でも言われていることであり、この空間でこの瞬間に行われている行為は「この世界でごく普通に行われていることの延長線上の行為」であるというのが実に興味深い話である。まあ、それでもそこに参加する人々の多くが「カネという基準で換算した価値でしか考えていない」という部分は否定しがたい部分ではあるものの、彼らはそれらに価値を見いだしているからこそそこに向かいそこに並ぶものに手を伸ばそうとするのである。その基本理念はマーケットの理念とおおよそ合致する部分が多いのでは無いだろうか? と思う次第ですが、どういったものでしょうか?
マーケティング的な話には弱いので詳細を語るには言葉が足りませんが、そこはベクトルのまるで違うマーケットであり、扱うのはサブカル的な価値そのものであり、その基本理念は「価値の共有行為」という経済と言うよりも文化や教育の思想であり、それらを構築する世界観は本当に混沌そのものであるという話であるというのが非常に面白いという話。また、お金という共有された価値でもって頒布行為が行われているものの、そこに陳列された頒布物の価値はまったく統一性のないものであり、強いてジャンル毎にある程度区分けがされている程度のものであり、カタログというマップはあまりにも膨大な書物であり、その中から自身の探す価値の合致アイテムを探し出すというのは忘れられつつある冒険活劇の宝探しを彷彿とさせるものすら感じさせられる。おそらくは現代日本に於けるグローバルマーケット界隈で必要なものの縮図がそこにあるようにも見えるこの活力に満ちあふれた世界が年2回のコミケであり、ちょっとでも興味を持ったら一度踏み入れてみるには足ると思う世界ではあると思うが、どうだろう? 年々過酷化著しい世界ではあるものの。
コミケに於ける「価値共有」の世界
「推し活」が認知されるようになった昨今、「同好の士」による交流の場所として強く機能するようになったコミケ会場。視認しやすい分野としてコスプレスペースでのコスプレ表現が注目されるようになったが、そもそも同人誌の文化的経緯は「創作を通じての価値観の理解と共有」である。近年の多様化によりより細分化される表現分野だが、コミケ会場ではそれらが色々な手法でもって同じ環境下に配置されるため、毎回「新しい発見がある」といわれている。また、「毎回発生する新しい発見」はコミケを楽しむための理念のひとつでもある。無論、価値観の相違や折衝はあるものの、それらも含めた上での「価値共有行為」という風にしてジャンルが定着するケースもあり、結果として「新規開拓」を目指す参加者は年々増加を続けているといわれている。
この狂気にも似た年2回のサブカルチャーの祭典ですが、今やマーケットの名に恥じぬ市場経済の縮図的な事が行われ、その小さな目的のために大掛かりな仕掛けでもって日本最大のハコに赴く彼らの意思と行動は言葉に出来ない何かものすごいエネルギーを感じる次第です。それをどう見るかは私たちの価値観次第といったところでしょうが、年々膨張は続き、巨額のお金と周辺施設への影響などを含めたこのブラックホールのようなムーブメント。この謎多き世界に何を見るかは人に依りけりですが、かつてのオタク世界の住人たる中の人曰く「最高にジャパニーズなドリーム」だと思う次第です。勿論、それらを生き抜くサバイバル知識は非常に多岐にわたるようになり技術一本で生きていける世界ではなくなりつつあるものの、人を惹きつける牽引力とそれらを動かすエネルギーは間違い無く世界の何よりもマンパワーに満ちたエネルギッシュな世界のように見える次第。
初見は興味本位でもいい、「何故彼らは魅せられるのか?」を視点にして彼らを観察しこの世界を俯瞰するのは、これからのために何か一石を投じる可能性があるかもしれない。なんてことを考えながら、コミケのタイムラインを楽しみにしつつ傍観を決め込む予定。年2回東京に出現する創作活動の冒険活劇、人生の知見を広げるもっとも過酷で狂気で抱腹絶倒な空間は触れられるのであれば一度くらい経験した方が良いと思う世界だと思う次第です。



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